テクノプロ・グループを取り巻く市場環境

市場規模

昨今の競争環境の激化、グローバル市場への進出、急速なテクノロジーの変化への対応等で、テクノプロ・グループがサービスをご提供するお客さまからの要請が高まっています。私たちテクノプロ・グループは、足元の景況感や商品の販売状況に直結する生産現場でのサービスのご提供ではなく、将来や近未来の企業の生命線ともいえる技術開発や研究開発を対象とすることがほとんどで、企業の研究活動への投資との関係性が高い事業と言えます。研究開発の伸長に伴い、技術的課題に関するお客さまからのテクノプロ・グループに対する要請やご相談が日々、増加を続けています。

技術系人材サービスの市場規模

日本の労働者派遣事業全体の市場規模は約8.7兆円(2022年)※1であり、そのうちエンジニアや研究者などの高度な専門性が求められる技術者派遣市場は約2.7兆円※2と推計されます。

※1、※2 厚生労働省「労働者派遣事業の令和4年度事業報告の集計結果」に基づき当社算出

技術系人材サービス企業 上位9社

技術系人材サービス市場は、当社グループを含む上位5社の規模が他を引き離している状況にありますが、最大手の当社グループでもシェアは6.8%と推計され、今後、中小企業の集約も予想され、業界大手企業にとっては成長余地の大きい市場です。

順位 企業名 売上収益(百万円) シェア
1位 テクノプロ・ホールディングス株式会社
(R&Dアウトソーシング・施工管理アウトソーシング )
191.987 7.1%
2位 株式会社アウトソーシング(国内技術系アウトソーシング事業) 164,776 6.1%
3位 株式会社オープンアップグループ(機電・IT領域、建設領域) 136,099 5.0%
4位 株式会社メイテック(エンジニアソリューション事業) 125,610 4.6%
5位 パーソルホールディングス株式会社(Technology SBU) 102,380 3.8%
6位 WDBホールディングス株式会社 49,297 108%
7位 株式会社アルプス技研(アウトソーシングサービス事業) 42,688 1.6%
8位 株式会社フォーラムエンジニアリング 31,279 1.2%
9位 株式会社コプロ・ホールディングス 24,098 0.9%

※ 各社発表数字(国内事業のみ)をもとに、当社調べ。

IT分野における人材不足の顕著化

技術革新のスピードが上がっている自動車やIT分野における技術者不足は、特に顕著であり、AI、IoT、ロボットに加え電気自動車(EV)や自動運転、省エネなどの分野で投資の拡大が続いています。また、みずほ情報総研㈱(経済産業省委託事業)「IT人材需要に関する調査」によると、IT人材の供給は2030年には中位シナリオでも54万人が不足するとの推計がされています。
IT技術者が全体の50%を超えるテクノプロ・グループにとって、IT人材の不足は大きな課題であると同時に、事業成長の分野であると考えています。

IT人材の不足規模に関する予測

※出典:経済産業省委託事業 みずほ情報総研株式会社『IT 人材需給に関する調査(2019年3月)』より当社作成

日本の雇用慣行と労働市場のミスマッチ

技術系人材サービスへの需要のもう一つの背景として、日本の労働市場のミスマッチがあります。一部、終身雇用終了を打ち出す大手企業も現れましたが、反面、多くの大企業では現在でも年功賃金・終身雇用を特徴とする、いわゆる日本型雇用制度が色濃く残る状況と言えます。若年層の賃金が相対的に低く、勤続年数が増すごとに賃金が上昇することにより、就業者にとっては、一つの企業に長期間在職するインセンティブが働きますが、中途採用の際には生産性と賃金のミスマッチが生じます。

その結果、日本の雇用市場は流動性が低く、国際競争力の低下が懸念されるだけでなく、キャリアチェンジをしたい就業者から見ても、転職のリスクが大きいことが障害となって十分に力を発揮できない状況があります。

当社では、技術者派遣によって個人が転職のリスクを負うことなく、スキルや経験が最も活かされるポジションへの最適配置を実現し、技術者の知識とスキルを最大限に発揮することで企業の国際競争力向上に貢献できると考えています。

  • 年功賃金型賃金カーブと、労働生産性に見合う賃金カーブ(1時間当たり)

    ※出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券投資情報部『エクイティリサーチ転載レポート』2017年5月1日
    (注)厚生労働省『賃金構造基本統計調査』、永沼・西岡(2014)等より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
    年齢別の労働生産性を推計した上で、賃金が生産性に比例し、人件費総額が変わらないような水準の賃金を試算することで、労働生産性に見合う賃金カーブを得た。年齢別生産性は、永沼・西岡(2014)『わが国における賃金変動の背景:年功賃金と労働者の高齢化の影響』の推計値を元に試算した。
  • 従業員規模別大卒求人倍率

    ※出典:リクルートワークス研究所『第38回ワークス大卒求人倍率調査』

高まる技術系人材の重要性

技術系人材サービス産業は、研究開発ニーズやITアウトソース需要の拡大などを背景に長期的に成長を続けています。しかし一方では景気変動の影響を受けやすく、不況期には大きく需要が減少することが懸念されてきました。当社グループでは、同志社大学STEM人材研究センターに依頼し、リーマンショックと新型コロナウイルス感染症拡大という2つの外的ショックがその発生から半年後の新規求人数に与えた影響を職種別に比較しました。その結果、日本で新型コロナウイルス感染症の拡大が始まってから半年が経過した2020年7月時点において、多くの職種ではリーマンショック後半年の時点よりも新規求人の減少が深刻である一方で、技術者では減少幅が大きく縮小していることが分かりました。(図表)

注:1. リーマンショック、COVID-19の影響がそれぞれ発生後6ヶ月経った時点で各職種に対する新規求人数指数にどの程度表れているのかを比較したもの
2. リーマンショック半年後の指数値は2008年9月を100、COVID-19半年後の指数値は2020年1月を100とした指数(季節調整済み)

出典:厚生労働省『一般職業紹介状況(新規求人:パート除く常用)』、同志社大学STEM人材研究センター 当社委託研究 2020年

このことは、リーマンショック時における技術者の需要減が過大であった可能性、設計開発現場の就業構造に変化が起きた可能性を示唆し、過去10年間における目覚ましいソフトウェア化の進展と相まって技術系人材の慢性的な不足による産業界における技術者の重要性が高まっていることを示していると考えられます。

技術系人材不足の深刻化と日本の技術職の抱える問題

技術系人材の不足は深刻化していますが、日本の技術者の処遇は海外と比較して相対的に低い状態が続いており、需給のミスマッチの要因となっています。テクノプロ・グループが、STEM人材を専門に研究する同志社大学中田喜文教授に依頼して実施した調査によると、2016年時点で日本の技術系人材の給与は米国の5割から6割と低い水準にあります。国内の職業間の相対的な処遇で比較しても、米国における技術者の給与水準は通信機器組立工の2.5から2.8倍であるのに対し、日本では1.3から1.8倍に留まっています。日本型雇用制度は職種別賃金でないため、人材不足でも特定の職種の賃金だけを上げることは難しく、このことが不足する技術者の処遇改善を遅らせ、人材不足を招いている一つの背景と考えられます。こういった意味から、プロフェッショナルの労働市場を確立し市場価値を向上させることで、技術系人材不足の解消に貢献する役割も技術系人材サービス産業には期待されています。

購買力平価で計算した職種別年収の日米比較[2016年時点]

(指数:米国=100)

職種 指数
医師 54
部長 97
課長 140
高等学校教員 125
デザイナー 74
薬剤師 43
技術者(士) 60
SE 61
プログラマー 49
保険外交員 63
臨床検査技師 94
看護師 71
販売店員 66
パン・生洋菓子製造工 124
用務員 91
給仕従業員 122
通信機器組立工 94
調理師 122
理容・美容師 95

※出典:『エンジニア給与の日米比較調査』報告

通信機器組立工の年収を100とした場合の職種別年収指数の日米比較[2016年時点]

(指数:通信機器組立工=100)

職種 日本 米国
医師 332 583
部長 268 261
課長 381 257
高等学校教員 205 154
デザイナー 136 172
薬剤師 168 367
技術者(士) 177 278
SE 170 265
プログラマー 129 246
保険外交員 124 186
臨床検査技師 145 145
看護師 148 197
販売店員 102 146
パン・生洋菓子製造工 99 75
用務員 89 92
給仕従業員 92 71
通信機器組立工 100 100
調理師 105 81
理容・美容師 91 91

※出典:『エンジニア給与の日米比較調査』報告

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